創作のようなもの、とか。
No.5
2011/11/18 (Fri) 22:45:04
ある日、エリルは深い森の奥で素手で深雪を掘り返していた。
息を白く濁らせながら無心に掻いていると、やがて石を積んだだけの簡素な墓が現れた。
灰色の墓石の前に雪色の花を供えて手を合わせる。
死者への祈りが終わると、彼女は雪の上に座り直した。
「……一年ぶりだね」
僅かに露出した土の下に眠る人物に語りかける。
「今年は久々に期待できるのが入ってきたよ」
エリルは近況や他愛も無い世間話を聞かせる。
しかし口下手な彼女の話の種はすぐに尽きた。
「……それじゃあ、また来るよ」
立ち上がって雪を払うと、エリルは誰も知らない寂しい墓を後にした。
自らの足跡を遡っていくと徐々に積雪は少なくなっていった。
樹木も白粉を落とし、緑で着飾っている。
靴に付着した氷の粒は解けて土と混じり泥になる。
荒れた道を行く人を虫の鳴き声が出迎える。
それが囁き声から大合唱へと変わるにはそう距離はいらなかった。
滝のような蝉時雨にエリルは舌打ちをする。
「ああうるせえ、だから夏は嫌いなんだ」
冷気を纏い、霜で足跡を残しながら彼女は森を抜けていった。
息を白く濁らせながら無心に掻いていると、やがて石を積んだだけの簡素な墓が現れた。
灰色の墓石の前に雪色の花を供えて手を合わせる。
死者への祈りが終わると、彼女は雪の上に座り直した。
「……一年ぶりだね」
僅かに露出した土の下に眠る人物に語りかける。
「今年は久々に期待できるのが入ってきたよ」
エリルは近況や他愛も無い世間話を聞かせる。
しかし口下手な彼女の話の種はすぐに尽きた。
「……それじゃあ、また来るよ」
立ち上がって雪を払うと、エリルは誰も知らない寂しい墓を後にした。
自らの足跡を遡っていくと徐々に積雪は少なくなっていった。
樹木も白粉を落とし、緑で着飾っている。
靴に付着した氷の粒は解けて土と混じり泥になる。
荒れた道を行く人を虫の鳴き声が出迎える。
それが囁き声から大合唱へと変わるにはそう距離はいらなかった。
滝のような蝉時雨にエリルは舌打ちをする。
「ああうるせえ、だから夏は嫌いなんだ」
冷気を纏い、霜で足跡を残しながら彼女は森を抜けていった。
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