創作のようなもの、とか。
No.7
2011/11/18 (Fri) 22:45:08
「おかえりなさい、エリル」
村へ戻ったエリルを迎えた少女は春の陽気のように暖かい。
その笑顔に心身の疲れが剥がれ落ちていくかのようだった。
「キアラ」
彼女に丁寧に包装された袋を突きつける。
「土産だ」
どこからどう見ても横柄な態度だが、エリルの不器用さを知っている彼女は微笑みを絶やさない。
キアラは子供のように期待に顔を輝かせながら袋を開ける。
赤い宝石の指輪が一つ。
「わあ、素敵! ……あら? 薬指には大きいわ」
その場で着けてみせた彼女に、エリルの青白い顔が熟した果実の色になった。
「そっ、そういうのじゃない!」
冗談よ、とキアラは笑って見せる。
「ありがとう」
黒い影が彼女を呑み込んだ。
「――っ!!」
男が目を覚ます。
どうやら座ったまま居眠りをしていたようだ。
「随分魘されてたけど、もっと早く起こした方がよかったか?」
対面に座る少女の顔からは心配している様子は読み取れない。
「……あんたにも弱いとこあるんだな」
ああ、と頷いた男は間を置いて言った。
「私は弱い」
PR